仕事用メカニカルキーボード
メカニカルキーボードに関する情報を集めると、ゲーミングキーボードとしての取り扱いが非常に多く、ゲームをしない人が文字入力のために使うキーボードとしてメカニカルをどう選定すればいいかよくわからないことがあります。
ゲーミングキーボードは仕事で求めるものとは異なるベクトルを持っているため、ゲーミング向けの機能や性能は業務には向いていないことがあります。仕事ではピカピカ光るLEDを求めていませんし、キーの反応が良すぎると誤打鍵が多発してしまいます。ワンキーマクロなんか要りませんし、変形してロボットになりそうなソリッドな外観の機器をデスクに置きたくない人のほうが多いでしょう。職場は遊び場ではありません。
ゲーミングキーボードは反応速度や連射性能、チャタリング防止や軽めの打鍵圧に重きを置きますが、仕事においてタイピストは打鍵感や打鍵音、外観を重視します。そのため、選ばれるキーボードメーカーから細かい構成、重視されるスペックが全く異なります。
「メカニカルキーボード おすすめ」などで検索して出てくる1ページ目の結果はほとんどがゲーマー向けか、若干粗悪なエントリーモデルのようです。メカニカルキーボード界隈はここ数年で劇的に進歩しているため、少し古い記事の情報がもう使えなくなっていることがあります。
このブログでは、メカニカルキーボード初心者の目線から見た仕事で使えるキーボード選びを紹介します。文字を打つこと自体が楽しくなれば、長時間のコーディング作業も、執筆作業も、これまで以上に充実した時間になり、人生の質が向上することが期待できます。
最高の打鍵感と打鍵音
仕事用のメカニカルキーボードに求めるのは文字を打つ機能だけでなく、最高の打鍵感と打鍵音と定義します。
一口にメカニカルキーボードと言っても、その打鍵感と打鍵音は一次元的に良し悪しがあるわけではなく、タイプライターのようなカチャカチャしたはっきりした打鍵音や、コトコトした上品な音、あるいはガスケットレスでパッキパキの甲高い打鍵音を響かせる、もはや楽器の一種と言っても良いものまで幅広くあります。強い反発が得られるものもあれば、非常に軽く滑らかに打てるものもあります。
指先に触れるキーキャップの触り心地や、本体の剛性、軸の滑らかさ、底打ち感の柔らかさ(あるいは硬さ)、こだわりのレイアウト、キーによって異なる押下圧など、こだわりだすと無限の組み合わせを試すことになります。その過程が非常に面白く、自分で調べだすとタイピスト向けの情報がとても少なく、海外の圧縮測定情報は課金しないと参照できないという敷居の高い世界でした。
そのため、自分で仕事向け情報をまとめたブログを作成して、自分自身の知っていること、知らないことを整理整頓しようと思いました。基本的に初心者目線になりますが、同じようにメカニカルに触れたばかりの人やこれから購入しようと考えている方の助けになれば幸いです。
「パンタグラフの方が良くないですか?」
よくあるご意見です。
キーボードは合う合わないが非常に大きい界隈なので、個人別の好みや指向性を追求すると、万人受けするキーボードは無いとも言えます。
例えば単焦点レンズを自作するフルサイズ一眼の職人界隈に「スマホで良くないですか?」と言えば苦笑いされます。いろいろな意味が含まれた苦笑いです。どういう意味なのかについては、きっと誰も説明してくれません。
パンタグラフ方式は悪いキーボードではありませんが、メカニカルと同じテーブルに並べて比較するものではありません(メンブレンもそうです)。パンタグラフキーボードは打鍵感を追い求めるものではなく、コスパや持ち運べる軽さ、打ちやすいキーピッチや薄さを重視するものだと思います。目的性が異なります。
薄いキーボードが良ければ、メカニカルにはULPキーボードがあります。パンタグラフ方式の形状をそのままに中身を洗練させた極薄メカニカルです。
メカニカルキーボードはカスタム性に富んだ機器ですので、一般的なゲーミングキーボードに触れて「使いにくい」と切り捨てず、もう少し深く調べてみることをお勧めします。高品質なロープロファイルキーボードに触れた瞬間、これまで「パンタグラフ方式が至高」と思い込んでいた信念が揺らぎ始めるかもしれません。
初心者向けに
基本的にこのサイトは初心者向け情報を中心に記述されています。
初めてメカニカルキーボードに触れる方、これから購入を検討している方、何台か購入してみたけどしっくりこない方向けの記事を追加していきます。
以前、メンブレンキーボードを触っていた方以外にも理解できるように記述しています。パンタグラフから移行する人、静電容量無接点方式から移行してきた人、タブレットのソフトウェアキーボードしか使ったことがない人でも問題ありませんが、例外的な情報はできるだけ排しているため、メカニカルキーボードコミュニティの方には「それだけじゃない、そうじゃない」という部分が目に付くかもしれません。
メカニカルキーボードの世界は日々進歩を続けていますから、情報が部分的に古くなることがあります。今ここに書かれている内容も半年後は古くなってしまうかもしれません。なるべく新しい情報を反映させていく予定です。
タイトルアイキャッチは UnsplashのAlexandru Aceaが撮影した写真