メンブレン式が駄目だとは言いません。何より恐ろしく安いです。20年前には1,500円のキーボードなんて想像もできませんでした。それで無線接続できて、打鍵感もそこまで悪くない、傷ついたり壊れたりしても別にショックじゃない、使い捨ての機器として取り回しの良い選択だと言えます。
メンブレン式キーボードは素材や構造について公開するほどユーザーが購入検討時に吟味するものではないため、表面的なスペックしか掲載されていません。しかし、メンブレン式は商品によって良し悪しが大きく異なり、また個体差もかなりあります。
会社でデスクトップPCを大量購入すると、メンブレン式キーボードが付属してきますが、軽妙に打鍵できるものと、完全に引っかかって全く打てないものもあります。品質のばらつきがかなりひどい製品もあります。
メンブレン式キーボードはシリコンゴムによって反発を生みますが、このゴム製品が経年劣化します。運が悪いと1〜2年で劣化を感じ始め、打鍵感と打鍵音が変化してきます。
私は10年もののパンタグラフ式キーボードを所有していますが、購入当初からあまり良くなかった打鍵感は現在では廃タイヤのような風格で、本体自体も湾曲してきました。
非常に古いメカニカルキーボードも所有していますが、こういった経年劣化はメンブレンほど感じません。
安いなら買い換えればいいと考えられますが、キーボードの製品の更新は早いため、常に打鍵感の異なる新しいキーボードに慣れるというストレスを定期的に味わうことになります。同じものを頑張って使い続ければ、徐々に劣化していくシリコンゴムのブヨブヨに耐えるストレスを感じることになります。長時間キーボードに触れているタイピストであれば、多少値が張っても一番気に入ったキーボードを長く使い続ける方が理にかなっていると思います。
保管に向かない
これは実録ですが、職場で使うキーボードは10台以上余るように購入してあります。業務用のメンブレンキーボードは故障率が非常に高いので、すぐに交換できるようにしておかないと業務に支障をきたしてしまいます。
この保管された予備キーボードがごっそり劣化してしまったことがあります。保存環境が悪かったせいもありますが、加水分解してしまって内部でベタつき、押下したキーが戻ってこないという問題が多発しました。
安いキーボードだからと予備としてたくさん購入してしまうと、こういった劣化問題に直面する可能性があります。
打鍵感が薄い
メカニカルキーボードのように、キー一つ一つに明確なクリック感や重みを感じることはできません。メンブレンしか使ったことが無い人は「タイピングは楽しいものだ」という意識を抱いた経験がなかったりします。スマホのカメラで「写真が楽しい」と感じないのと同じです。
どの機種を選んでも、シリコンゴムのブヨブヨ感から逃れることができず、メンブレンキーボードを使い続ける限り、タイピングが楽しいと感じることはないでしょう。
カスタムできない
キーキャップやスイッチの交換が難しいため、基本的に改造や組み換えなど、自分好みの自由なカスタマイズができません。故障したときに修理することも難しく、買い替えたほうが早いです。
静音性
メンブレンは比較的静音性が高いというイメージがありますが、それはメカニカルのクリッキー軸や一部のタクタイル軸などのやかましい軸と比較したときで、一般的なリニア軸や静音軸と比較するとガチャガチャやかましいです。