ガスケットマウント

キーボードTips

一般的にガスケットマウントと言うと、キースイッチを支えるPCBやプレートと本体をネジ止めせずに、間にシリコンゴムのキャップやシート、ボールを挟み込んで、キーを押さえたときに沈み込むような柔らかさを実現するものです。

Keychron Q1 Max QMK/VIA ワイヤレス カスタム メカニカルキーボード(US ANSI 配列) より引用

ガスケットマウントがあることで、打鍵音が筐体に響くことを防ぎ、キーそのものの打鍵音だけを響かせることができます。

ガスケットマウントの種類

一口にガスケットマウントと言っても、いくつか種類があります。

プレートと本体を連結するブリッジ部分に挿し込む形状のシリコンゴムや、プレートを下から支えるボール状のものなどがあります。

  • シリコンゴム…プレートと本体が連結する部分にシリコンゴムのソックスやボウルを装填するタイプです。
  • フォーム…ポリエチレンフォームなどで下から支えるものです。柔らかくて良く沈みます。
  • シリコンパッド…プレートの下に敷くシリコンパッドの突起で支える特殊な構造のガスケットです。

ガスケットの種類によって実際の打鍵音や打鍵感は変わってきますが、ガスケット自体が比較的新しい機構であることから、あまり詳細を調査したレポートは現状見つかりません。

ガスケットがついているキーボードは打鍵の底打ちの硬さを和らげる効果があるので、長時間キーボードを打っていても指先が痛くなりません。最近の金属筐体のキーボードは非常に剛性が高いので、この構造が入っていないとかなり指先に負担がかかると思います。

ガスケットマウントのメリット

ガスケットマウントにはいくつかの明確なメリットがあります。

  • 振動の軽減…キーを強く叩くことで発生する振動を減衰させ、タイピングに安定した打鍵感を与えます。特に剛性の高い金属筐体で効果が顕著です。
  • 応答性の向上…PCBとケースの間にある程度の可動性を与えることで、スイッチの応答性が向上します。
  • 打鍵音の向上…キーの押下で発生する本体に対するノイズを低減し、打鍵感を損ねることなく静かで高級感のある打鍵音を求めるタイピストの要望に応えます。
  • カスタム性…自作キーボードでは、複数のガスケット方式を選択することができ、ガスケットの反発を変えることもできます。

ガスケットマウントのデメリット

ガスケットマウントにもデメリットがあります。自作キーボード以外ではガスケットの有無を選択できませんが、何らかの参考になるかもしれません。

  • 慣れない…ガスケットマウントのない硬いキーボードに慣れていると、この柔らかい感触に適応するために時間がかかることがあります。
  • 選択肢が狭い…基本的に高級機にしか搭載されていないため、ガスケットマウントを必須条件としてメカニカルキーボードを探すと、選択肢が狭くなります。
  • 比較的高い…ガスケットマウントのキーボードは非採用キーボードよりも高額になります。
  • 耐久性…ガスケットが経年劣化することで、打鍵感が変化したり、へたりが発生する可能性があります。

意外なことですが、ガスケットマウントが嫌いなタイピストもいるようです。打鍵したときにカスタネットのような大きくて派手な音を響かせたい人にとっては邪魔な機構になりえます。

ガスケットの質にもよりますが、あまり柔らかい感触だと底打ち感が甘く、キーを打っている、という明確な感触が失われます。底打ちが硬い方が好みな人には向かない可能性があります。

その他のマウント方式

ネジ止めとガスケットマウント以外にも、Oリングでマウントする方法、PCB自体をケースに固定するもの、PCBの間をケースにネジ止めするトレイマウント、またリーフスプリングマウントという軽自動車のリアサスみたいな板バネ方式もあります。

  • トレイマウント…いくつかのねじ込みピンでPCBをボトムケースに固定する。
  • トップマウント…プレートをトップケースに固定する。
  • ボトムマウント…プレートをボトムケースに固定する。
  • サンドイッチマウント…ボトムケース、プレート、トップケースに貫通するネジで固定する。
  • 一体型プレート…トップケースがプレートになっているもの。非常に堅牢な感触になる。

Keyboard Mounting Styles

現状、一般的に販売されているメカニカルキーボードは特筆されていなければネジ止めされたものか、ガスケットマウントのものが主流です。
ガスケットマウントは打鍵音をこもらせてしまう問題がありますが、ボール型のガスケットマウントや、ダブルガスケット方式などの打鍵音を損なわない方式もあります。

ガスケットマウントの打鍵音への影響

ガスケットマウントは打鍵感だけでなく、打鍵音にも若干の影響を与えます。

柔らかいガスケットによってプレートの振動に含まれる高音域の音が吸収されます。そのため、甲高い打鍵音が抑えられ、コトコトした滑らかで柔らかい印象の音になります。このプレートの振動を抑える働きにより、プレートの共振も抑制され、特定の周波数の音だけが強調されることを防ぎます。

振動の分散によってキーボード本体に打鍵音が均一に拡がることにより、中央のキーと外側のキーとで打鍵音の差が生まれにくくする効果があります。

ガスケットの素材や構造によって、これらの打鍵音への影響は異なります。厚みのあるガスケットほど多くの音を吸収しますが、プレートや軸ごとの打鍵音の大きな変化がなくなり、均一化する傾向があります。つまり、アルミプレートから真鍮プレートに交換しても、劇的な打鍵音の変化を期待することが難しくなります。

ガスケットありvsなし

ガスケットがある場合とない場合の打鍵音の変化は、高音域のノイズの変化なので、実際に生音を聴かないとわかりにくいです。比較動画がいくつか上がっていますが、高音域のノイズは良いマイクと録音ソフトウェアによってリダクションされてしまうことがあります。

Gasket Isolation vs Silicone Bowl vs Top mount — Tofu65 2.0 typing sounds (with case foam)

上記比較動画では、トップマウント品はしっかりプレートをネジ止めしています。

ガスケットマウントは本当に必要か?

ガスケットマウント搭載品と非搭載品で迷っている場合、メカニカルキーボードにガスケットマウントという機構は「必要」なものではないということを思い出してください。個人の好みに大きく左右されます。

静音性や底打ち感が気になってしまう人には、ガスケットマウントがあったほうが良いと思いますが、硬い打鍵感が好みの人や、そもそも打鍵音や打鍵感にそこまでのこだわりを感じていないのであれば、「あってもなくてもいい」という結論になります。

私自身、搭載品(金属筐体)と非搭載品(プラスチック筐体)の両方を使っていますが、ガスケットマウントがあってよかったー、という満足感は別にありません。金属筐体のガスケットを除去して使用したところ、筐体へ打鍵音が伝わり、更にデスクへ振動が突き抜けていく感じがしました。ただ、プレート自体がある程度打鍵の振動を吸収してくれるので、カスタネット並を期待していたら意外と大きな変化を感じることはできませんでした。

金属筐体と金属プレートの場合は、ガスケットマウントがあったほうが打鍵感は柔らかくなると思います。よくわからない場合は、

  • 静音性重視…ガスケットマウントが必須
  • 金属筐体+金属プレート…ガスケットマウントが必要
  • 金属筐体+PCプレート…ガスケットマウントがあってもいい
  • プラスチック筐体+PCプレート…ガスケットマウント不要

上記を参考に検討してみてください。

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