キーボードのキーキャップ

キーボードの選び方

アイキャッチはWHATGEEK Exploring Different Profile Keycaps for Mechanical Keyboards より引用

キーボード本体とスイッチはじっくりと選んだのに、キーキャップを適当に選定するのは勿体ないです。キーキャップは最も多く触る部分なので、キーボードの触ったときの印象を決める重要な要素です。打鍵感だけでなく、打鍵音にも大きく影響します。本体を買い替えてもキーキャップを使い回すことはよくあることなので、ここにコストをかけても長い目で見るとメリットがあります。

メカニカルキーボードのキーキャップをご自身で選ぶときは、レイアウトとOSに注意してください。Mac用のキーキャップは選択肢が少ないです。またJIS配列のキーキャップも少ないです。

キーキャップは視認性だけでなく、そのプロファイルによって形状が異なります。OEM、Cherry、XDA、DSAはよく見かけます。

また、メーカー独自のプロファイル(KSA、OSA、MOA等)があり、それぞれよく考えられた設計思想を持っています。薄型のキーキャップはロープロファイル軸にしか刺さりません。

素材

キーキャップの素材には、大まかにABSとPBTの2種類があります。

ABSは比較的安価ですが、耐久性に乏しく、すぐに表面がツルツルテカテカに摩耗します。PBTは耐久性が高く、サラサラした指ざわりの表面加工が施されています。どちらのキーキャップを選択しても、打鍵音にはほとんど影響しません。

この2種類以外に、木製、陶器、金属などで作られたマニアックなキーキャップがありますが、いずれも重く、日常的な打鍵には向いていません。キー軸に重いキーキャップを跳ね返すだけの力がないと、最悪沈んだまま戻ってきません。タイピングももっさりしたものになります。見た目が変わっていて高級感、特別感があるので試す人は多いのですが、がっかりレビューがあげられています。

普段使わないキーのために装飾キーキャップを挿す人もいます。キャラクターやエンブレムが施されたキーキャップは価格も高くなります。職人が手作りしたものは一点ものになっており、1個で数千円の価格がつきます。

お土産キーキャップセット

フィットするかフィットさせるか

キーキャップのプロファイルは、フラットな形状とエルゴノミクスな形状のキーキャップに分かれると思います。

エルゴノミクスな湾曲したキーキャップ(シリンドリカルステップスカルプチャー)は打鍵しやすいですが、指に触れる打鍵面が斜めになっているために、打鍵感が良くないというトレードオフな特徴があります。フラットな形状は人によっては無理な打鍵を行うために腱鞘炎になってしまうことがありますが、キーボードの上で指を平行に動かしても引っかからないというメリットもあります。

エルゴノミクスキーボードでも触れていますが、キーキャップを自分の指にフィットさせるのか、自分がキーキャップにフィットしにいくのかは使う人が決める問題です。良し悪しはありません。前者は湾曲したプロファイルから選択し、後者はフラットデザインから選択し、どっちつかずの人はcherryのようななんとなくそれっぽい形状を選択することができます。

私はKeychronが作っているOSAプロファイルのキーキャップが一番好みです。XDAは比較的薄く、打鍵音が甲高くて好みです。

さまざまなタイプのキーキャップ プロファイルと素材のガイド – A Guide to Different Types of Keycap Profiles and Materials

キーキャップセット

キーキャップをセット購入しようとしたとき、販売ページにどういうキーが含まれるか記載されていないことがあります。こういった商品は何が送られてくるかわからないので避けた方が安全です。

118キー以上のセットをお勧めします。購入するときは、本体PCBに適合するサイズのキーが含まれているか確認してください。
Mac用のキーキャップは比較的数は少ないですが、今は探せば結構見つかります。⌘キーがSuper、OptionキーがAltと書いてあるキーボードは妥協が匂うので好ましくないですよね。

KAM アウトライン厚みのある PBT キーキャップ より引用

初めて購入するキーキャップはデザイン性よりも、印字面の視認性の良さを基準に選ぶことをお勧めします。

キーキャップのサイズ

キーキャップはアルファベットの文字キーの幅を「1U」として、1.25U、1.5U、1.75U、2U…と0.25刻みで規格されています。
ANSI配列のスペースキーは一般的に6.25Uで、購入前にサイズを確かめたほうが良いです。

Keycap size by keyboard より引用

キーキャップが所有する本体に適合するか判断するには、一番下の列を確認します。1Uのコマンドキーが挿さる部分があるのに、キーキャップセットには1.25Uしか含まれていないと、他の無関係なキーで代替するしかありません。

かわいいキーキャップ

MOAプロファイルのキーキャップには可愛いデザインのものが多数揃っています。逆にオフィス向けの落ち着いたデザインのものはありません。

この中にキャラもの(ちいかわ等)がありますが、明らかに許可を取って作成しているものではないので注意してください、

角が丸みを帯びたMOAプロファイルは角を打鍵しても指先に尖った刺激がないので、非常にソフトで指に優しいです。平らなプロファイルで形状はXDAに似ていますが、背が高く、打ちやすい印象です。その代わり、打鍵音がわずかに低いです。

キーマップを変えたとき

キーマッピングアプリでキーの割当を変更した場合、該当するキー位置のキーキャップを変更することができます。その場合、キーキャップのプロファイルに注意すべきです。

OSAやCherryのようなフラットではないキーキャップの場合、挿す位置が変わってしまうと、その部分だけ形状が変わってしまって、見栄えが悪くなったり、押しにくくなることがあります。
例えば、65%〜75%キーボードの場合、Enterキーの列の右側にほとんど使わないキーが並んでいることがあります。ここを自由にカスタムすることで使いやすくすることができますが、キーキャップの形状が合わずに飛び出したように見えてしまうことがあります。

参考:
65%以下のキーマップ

キーキャップ自体の配置をカスタムしたい場合は、CAM、MOA、XDAなどのどの位置のキーも同一の形状のキーキャップを選択すると良いです。

ブランクキーキャップ(無刻印キーキャップ)

文字が印字されていないブランクキーキャップ、ユニバーサルキーキャップ、ドットキャップと呼ばれるものがあります。これはタッチタイピストのための大リーグ養成ギプスみたいなもので、未経験者が常用するようなものではありません。そのまま使われることもありますが、完全な無刻印の場合、購入者が業者に依頼して好きなデザインの印字を発注するために使われることもあります。

長年キーボードを使い続けているタッチタイピストでさえ、手元に目を落とすタイミングがあります。これはホームポジションがズレてミスタイプしたときに発生します。人間ですから必ずミスをします。そういうときに正しいキー位置を確認するためにキャップの刻印を確認するのですが、その刻印が無いと正しいキー位置を確認するのに非常に無駄な時間がかかります。

Cherry Profile ブランク121 119キー 厚い PBT 磁器 白 赤 ダークグレー ライトグレー ブラック キーキャップ ANSI ISO配列 チェリーMXスイッチ メカニカルゲームキーボード(ブラック119)

見た目が洗練されていて慣れると使い心地は良さそうに見えますが、書院のワープロ時代から35年ほどキーボードに触れ続けた私にとっても、このキャップを常用するのは悪手だと思います。ダークバッグにキーボードを突っ込んで作業しているのと変わりません。

ドットキャップを使っていますが、backspaceの打鍵回数が普通じゃありません。

上記動画のコメント欄でも投稿者が`It’s called Dots Keycaps. I built this keyboard for traveling, it’s lightweight. I don’t like everything on this keyboard, keycaps, switches, layout. I just had no other keycaps to use.`( これは Dots Keycaps というものです。このキーボードは旅行用に作ったもので、軽量です。このキーボードのキーキャップ、スイッチ、レイアウトなど、すべてが好きではありません。他に使えるキーキャップがなかっただけです )と断じています。

例外的に、タイプミスしたときも指先でキーを探せる人にとっては、ブランクキーキャップは良い選択となります。手元を見ることがないタイピストにとって、文字刻印などキートップの汚れと同じです。

おすすめのキーキャップ

選択肢の幅が広いため、初めて選ぶときは非常に迷ってしまうと思います。良くわからないときは以下の項目を参考にしてください。

  • PBT素材を選ぶ。
  • 使用するキーボードの配列に合ったもの(JIS配列、ANSI配列、ISO配列等)を選択する。
  • 使用するOSに合ったものを選ぶ(MacユーザーがWindows用キャップで妥協するべきではありません)。
  • キーボードのすべてが埋まるセット品(最下行のキャップが足りているか確認する)。
  • 視認性の良いもの(印字文字サイズが小さい、コントラストが低いものは避けます)。
  • cherry、OEM、XDAから選ぶ(SAのようなノッポキャップは避ける)。

上記を参考にして、個人的な修正を加えて、あとは好きな色を選ぶと良いです。キーボードが白系の場合、キーキャップにも白系か明るい色を選ぶのが無難です。キーキャップでコントラストをつけすぎるとコレジャナイロボみたいで安っぽくみえることがあります。

スペースキーを逆さにする

スペースキーを親指打鍵する人は、これを逆さに取り付けていることがあります。スペースキー、あるいは最下部のキーを逆さに取り付けると、キーの打鍵面が南向きになり、親指に平行に触れるため、非常に打ちやすく感じることがあります。

これは個人の打鍵フォームによって感触はかなり変わってくるので、実際に試してみて、合わないなと思ったら元に戻したほうが良いです。合わない状態で打ち続けると手首が痛くなります。

文字の印字方法

キーキャップの文字の印字方法によっては摩耗耐性が低かったり、逆に決して消えない方式もあります。

デカール

文字のシールを貼る方式。粘着力が強いので簡単には剥がれませんが、摩耗には弱いです。特に爪の先でタイピングするとすぐに剥がれます。

シルクスクリーン印刷

スクリーンを通してインクを押し付けて印字する方式で、大ロットの生産が可能なため、安価なキーボードに採用されています。摩耗耐性が低く、文字が薄くなったり剥がれたりします。

レーザーマーキング

レーザーでプラスチック表面を焼き付けて印字する方式です。耐久性が高く、文字が消えにくいです。細かい印字に不向きで、コストもかかります。

昇華印刷

特殊なインクを熱で昇華させてプラスチックに染み込ませる方式です。文字が鮮やかで耐久性も非常に高いのが特徴です。反面、設備コストが高いため、コストがかかります。

基本的に摩耗によって印字が消えることはありません。

二色成型(ダブルショット)

キーキャップを2つの色のプラスチックで成型し、文字部分を別の素材で構成する方式です。構造上、摩耗しても文字が消えることがありません。個別に金型が必要となり、生産コストが非常に高いため、セットで1万を超えるものもあります。

What Are Double Shot Keycaps? Everything You Need to Know

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