メカニカルキーボードの打鍵感はいくつもの要素が重なってできています。
メンブレン方式のキーボードと異なり、キー自体にはシリコンゴムは使われていないため、非常にソリッドな打鍵感を得られます。またPCBやプレートの精度、軸のピンの数によって打鍵時のキーのグラつきが変わります。ガスケットマウントの有無で、底打ちの感覚が変わります。
ご自身が求める打鍵感を得るためには、いくつものパーツを試してみることをお勧めします。
軸
打鍵感に最も大きな影響を与えるのが軸の種類です。
リニア軸であればひっかかりがなく、指をおいた瞬間から底までスッと滑らかに落ちていく、深く押し込むほどに反発が強くなっていく感覚があります。
Mechanical Switches How to Choose より引用
タクタイル軸であれば最初に軽い抵抗があって、力を入れるとストンと落ちるような明確な打鍵感が得られます。
Mechanical Switches How to Choose より引用
クリッキー軸はタクタイルと似ていますが、もっとソリッドに反応し、チキチキというスイッチ音を鳴らします。
Mechanical Switches How to Choose より引用
基本的には上記のような感覚ですが、例えばタクタイル軸であればいずれもタクタイル感がありますが、細かい感触やキー荷重は製品によって異なります。通常の茶軸は非常にソフトな印象がありますが、バナナ軸やミント軸はより速く明確なタクタイル感があります。
このサイトには個別の軸ごとに圧縮測定グラフが掲載されています(一定期間に参照できるレビューは10件までです)。
気になる軸がいくつかあれば、ここで一度比較してみても良いかもしれません。
ルブ(潤滑)
キー軸にルブを塗ることによって、打鍵感をより滑らかなものにすることができます。
クリッキー軸のように、ステムにルブを塗ってはいけない軸もあるので注意が必要です。
キーキャップ
キーキャップによっても打鍵感は変わります。
プラスチック製やPBT、ABSなど、素材によって質感や重量感が異なり音や打鍵感が変化します。
軽いキーキャップほど指先に軽快な反応があり、重くなるほどに反応は鈍くなります。陶器や金属製のキーキャップは重すぎて、オペレーションフォースの弱い軸に挿すと最悪戻ってきません。
キーキャップは角が指先に触れると打鍵感を損ねますが、MOAプロファイルという角丸のキーキャップなどは非常にさわり心地が良く、打鍵感も軽くて快適です。
他方、ABS素材のキーキャップはメンブレンのキーキャップと同じような触り心地で、使い込むほどにペタペタして、打鍵感を大きく損ねます。
また、キーキャップの厚みによって底付き感や音が変わります。薄い方が甲高い音で、指先に伝わる衝撃も強いです。
プレート
プレートはPCBを本体にマウントするための板で、キー軸を支えています。
プレートにはFR4、カーボンファイバー、アルミなどの複数の素材がありますが、これは打鍵音に影響し、打鍵感にはほとんど影響しません。プレートの厚みによって筐体に響く音が変わってきます。
筐体
プラスチック筐体は剛性が低く、プラスチック製品を叩いている感覚は拭えません。金属筐体であれば、非常に安定した打ち心地が期待できます。これは素人が目隠ししてもわかるくらいの差があります。
Oリング
軸に着けるOリングによって打鍵感は大きく変わります。
Oリング自体は打鍵音の静音化のために使われるものですが、打鍵感は著しく損なわれます。劣化した安物のメンブレンを叩いているような感じがします。
スタビライザー
スペースキーやShiftキー、Enterキーなどの大きなキーは、スタビライザーが内部に仕込まれています。このスタビライザーの種類とルブによって打鍵感は大きく変わってきます。
スタビライザーがないと大きなキーの端を押さえると、キーが傾いた状態で押下されてしまい、打鍵感も打鍵音も損なわれます。スタビライザーがあっても、ルブを塗布していないものはやはりノイズや不快感があります。
自分でスタビライザーを組み立てる場合は、PCBとの間に緩衝板を挟み込むか、無ければバンドエイドなどを切って貼り付ける方法が一般的です。これをやらないと打鍵感が著しく損なわれることがあります。
また、スタビライザーをネジ止めする場合は、ネジを締めすぎると打鍵感に影響します。
ボトムフォーム
ボトムケースに敷き詰めるフォームを取っ払うと、キーボードによってはスタビライザーのついたキーの打鍵感がモソモソした感じになることがあります。一番下のフォームは必要な部材なので、省略しないほうが良いです。